
今回は石膏の膨張について学習していくよ。

膨張って、膨らむっていうことでしょ?ってことは、もしかして
石膏は硬化すると、風船みたいに大きく膨らむってこと?

風船とはちょっと違うんだ。けど、石膏は硬化すると膨張するよ。
前回、石膏が硬化するとき、二水石膏の針状結晶が絡まりあってぶつかり合うということを学んだよね。それがヒントだよ。早速見てみよう。
石膏が膨張するしくみ
前回の「石膏が硬まるしくみ」で出てきた図を使って、石膏が膨張するしくみを説明します。
図は、容器に入った水と石膏の様子を表しています。(図は、わかりやすいように、少しオーバーに描いてあります。)

半水石膏と水を練和すると、半水石膏が水に溶解します。それを型(図のグレーの部分)の中に流していきます。青い点線は、練和した石膏の量を表しています。

二水石膏の針状結晶が析出しはじめます。

二水石膏の針状結晶が、さらに成長し互いにぶつかりあいます。

二水石膏の結晶が互いにぶつかり合って絡み合い、硬化します。結晶は内側に成長できないので、外側に成長します。これが膨張として現れます。最初に練和した量よりも体積が増えています。
石膏の硬化膨張

石膏が膨張するのは、二水石膏の針状結晶が成長するからなんだね。
石膏が膨張することを「硬化膨張」というよ。

針状結晶が成長して、広がっていく様子を観察しよう。
α石膏とβ石膏の針状結晶



硬化膨張も、硬化時間と同じように計測するための器械があるんだよ。
硬化膨張計測器
石膏の硬化膨張は、図のような硬化膨張測定器を使って測定します。箱型の容器の部分に石膏を入れて硬化させます。すると、硬化膨張の力で金属の板が内側から押されるので、その数値が目盛りに現れます。これが硬化膨張の値です。




石膏の硬化膨張に与える因子

石膏が硬化膨張するしくみはわかったけどさ、実際には、どれくらい膨張するの?。
石膏の種類と硬化膨張
石膏の硬化膨張は、種類や製品によって異なります。
タイプ | 分類名 | 用途 | 硬化膨張 (2時間) (%) | 圧縮強さ (1時間) (MPa) |
1 | 焼石膏 | 印象採得 | 0~0.15 | 4.0~8.0 |
2(クラス1) | 焼石膏 | 咬合器装着 | 0~0.05 | 9.0以上 |
2(クラス2) | 焼石膏 | 模型用 義歯埋没 | 0.06~0.3 | 9.0以上 |
3 | 硬質石膏 | 模型用 義歯埋没 | 0~0.2 | 20.0以上 |
4 | 硬質石膏 | 模型用 (低膨張) | 0~0.15 | 35.0以上 |
5 | 硬質石膏 | 模型用 (高膨張) | 0.16~0.3 | 35.0以上 |

通常の石膏なら、0.2~0.25%くらい膨張するよ。
膨張が小さいタイプの石膏だと、0.08%くらい、大きいタイプは、0.35~0.4%くらいかな。
でもね、硬化膨張も条件によって、値が変わってしまうことがあるんだよ。

え??それって、硬化時間と同じように、また、何かの影響を受けるの?歯の模型は、患者さんのお口の中の歯よりも、大きかったり、小さかったりすると困るよね・・・?

早速、どんなことが影響するのかみてみよう!
石膏の硬化膨張に影響を与える因子
混水比 | 混水比が小さい:硬化膨張が大きくなる 混水比が大きい:硬化膨張が小さくなる |
練和条件 | 練和が多い(練和時間長い・練和速度早い):硬化膨張が大きくなる 練和が少ない(練和時間短い・練和速度遅い):硬化膨張が小さくなる |
温度 | 水温や室温が高い:硬化膨張が小さくなる |
添加物質 | 硬化時間調整剤を添加する:硬化膨張が小さくなる |

石膏を練る時は、たくさんかき混ぜて練和するとよく混ざるから、良いのかな〜と思ってたけど、硬化膨張が大きくなっちゃうの?

これは、2分以上続けて練和したり、器械を使って高速で長い時間練和するような極端な使い方をしたときのことだよ。
理論的には、石膏の結晶が成長しているときに練和し続けてしまうと、結晶がバラバラになって、結晶の核が増えて、硬化膨張が大きくなるとされているよ。
実際に使う時は、練和時間を守っていれば心配いらないよ。

あとね、もう1つ知りたいのは、硬化時間調整剤を入れると硬化膨張が小さくなるの?

普通石膏の場合は、石膏の結晶成長を阻害すると言われているよ。

あと、温度が高いとは、40〜50度以上の高温になったときのことだよ。高温になると、半水石膏の水への溶解度が小さくなるので、理論的には硬化膨張が小さくなるんだ。
でも、実際使うときにはこのような高温になることは考えられないよね。
混水比と硬化膨張

石膏の硬化膨張に影響する因子は、4つありました。その中でも「混水比が、硬化膨張に影響を与える」という現象は、何となくイメージができなかったり、覚え間違えてしまう人が多いんだ。
もう少し詳しく、図を使って説明するね。
同じ容積の器に次のような条件で石膏と水を入れます。
左:石膏の量が少ない(混水比が大きい) 右:石膏の量が多い (混水比が小さい)

半水石膏と水を練和し、半水石膏が水に溶解して飽和水溶液となります。

二水石膏の針状結晶が析出しはじめます。

二水石膏の針状結晶が、さらに成長し互いにぶつかり合います。混水比が小さい方は、より密集しています。

混水比が小さい方は、大きい方と比べて、結晶核の数が多くなるので、硬化膨張が大きくなります。

混水比の小さい石膏は、結晶がすごく密集してて、まるで満員電車みたいだね。
密集してるから、結晶が外側にはみ出しちゃうんだ!

吸水膨張
模型を作るときは、型の中に練和した石膏を流して固めます。
しかし、固まってすぐの模型を水に濡らしたり、水がある場所に置いてしまうと、模型は水を吸って膨張します。これを吸水膨張と言います。
硬化時間が過ぎて、かたまったばかりの石膏は、見た目にはかたまったように見えても、針状結晶が成長し続けています。ここに水を加えると表面張力が開放されてしまい膨張が大きくなります。
型から外した後の模型は、すぐに切ったり水に濡らしたりしないように、乾燥した場所に1時間以上置いてから作業するのがおすすめです。

石膏の硬化膨張って、いろいろな影響を受けるんだね・・・。
硬化時間に与える影響と、硬化膨張に与える影響・・・、ちょっと似てるから、頭の中がごちゃ混ぜになりそう!

本日は、ここまでにしましょう。
新しく出てきた言葉と意味は、しっかり覚えていこうね!

いつも同じ硬化膨張になるように、石膏模型を作るときは、気をつけないとね。
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